地元の米にこだわる高知で一番小さな酒蔵

清流四万十川の源流近く米づくりに恵まれた自然環境

大きく蛇行しながら続く四万十川の上流付近。文本酒造は、四万十町の窪川地域に昔から根付く、唯一の酒蔵です。平成28年、高岡郡窪川町、幡多郡大正町、十和村の3つの町が合併し四万十町に。文本酒造のある旧窪川町には、以前は、7〜8軒の酒蔵があったとか。標高220〜230mにある窪川盆地は朝晩の気温差が大きく、米づくりに適した環境。四万十川からの水も豊富で、美味しいお米が採れる地域として知られることから、酒造りが盛んだったことも頷けます。

「入駒」は、創業当初から続く銘柄。

「美味しいお米が採れるところなら、美味しいお酒もできるだろうと思い蔵に入りました」と語るのは、平成30年から文本酒造の副杜氏を担当する小笠原康眞さん。酒造りを始めてから、夏は田んぼで米づくりに励むなど、米には格別のこだわりがあります。現在は、吟の夢、風鳴子、フクヒカリと愛媛県産の松山三井の4種類の米を使用。高知県産の吟の夢は、お酒の仕込み水と同じ水を使用し、四万十町で育てたものを使います。来シーズンから、松山三井を土佐麗(とさうらら)に切り替えて全量高知産に。また、今期からは、地域の食用米としてブランド化された仁井田米を使った酒も新たなラインナップに加わりました。

米の旨み甘みを感じるまろやかな食中酒を目指す

文本酒造のお酒は、まろやかな優しい口当たりが特徴。米の旨みが感じられるうえに、キレもあります。「この地域では、お米はもちろん、アスパラやピーマン、海側に行くとみょうがなどの園芸作物が盛んです。また、豚や肉牛、乳牛の畜産農家も多いです。そういった地元の食材と合わせやすい酒にしたいです」と小笠原さん。地域の食べ物に合う、食中酒を理想としています。精米歩合も削ったもので50%。なるべく低精米にして、お米の旨みや甘みを引き出しているそうです。

一般公募で募った銘柄「日乃出桃太郎」。若者からお年寄りまで、幅広く親しまれる酒でありたいという願いが込められている。

米どころの窪川地区は、農業の町として発展してきました。「性格的にものんびりとした穏やかな人が多いですね。漁師町とは好まれるお酒も違います」と話すのは、4代目蔵元の文本憲助さんは語ります。高知の酒らしい強めの酸を感じるシャープな酒質とは一線を画す、穏やかな味のまろみは、地元の食文化や人柄につながるものがあるようです。

全量木槽搾り&瓶燗火入れで豊かな風味を実現

蔵の中には、約120年近く歴史が刻まれていました。木の甑(こしき)や木槽(きぶね)搾りなど、古い道具も現役で活躍しています。「木の甑は、断熱に優れているので、外気が冷たくてもお米が水っぽくなりにくい。うちのように大量に蒸さない場合はちょうどいいんです」と小笠原さん。古い道具の利点を生かした手造りの小仕込みを続けています。

木製の板でゆっくりと圧力をかける伝統の木槽搾り。

この数年、県外への販路も増やし、石高も50石、75石と毎年少しずつ増やしています。今年の生産量は、100石。それでもお酒は、全量木槽搾りを続け、瓶燗火入れ、瓶のまま冷蔵庫に貯蔵する行程を貫きます。手間ひまを惜しまず、ブラッシュアップを重ね、目指す酒質を追求。「桃太郎」の名の通り、多くの人に親しまれる存在となりそうです。

[おすすめの一本]「仁井田米でつくった純米酒」

四万十町の窪川地区でつくられる食用のブランド米「仁井田米」の中でも、農薬・化学肥料を抑えてできた特別栽培米「にこまる」を100%使用した純米酒。米の旨みと甘みが引き出された味わい深い一本。冷でも燗でも楽しめる、万能の食中酒。

文本酒造株式会社

高知県高岡郡四万十町本町4-23

明治36年創業。高知県の中西部、四万十川の源流近くの窪川地域に、唯一残る酒蔵。高知では一番小さな酒蔵として、小規模ながら地元に根ざした酒造りを続けている。創業当時からの銘柄「入駒」と昭和41年に公募により誕生した「日乃出桃太郎」が看板商品。

[蔵内・参考資料]

製麹にたらいを使用。

通常の醪(もろみ)は、タンクで30〜35日間かけて発酵。大吟醸は34〜40日間。

23日目の醪。爽やかな吟醸香が漂う。

以前、使用していた木樽も。

木槽搾りで使用した酒袋を洗う蔵人。

搾った酒は瓶燗火入れ後、冷蔵設備内で瓶のまま貯蔵する。

各銘柄の販売も。

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